闇の仕事人KAGE Shadow of The Ninja

リメイク版KAGEこと『闇の仕事人KAGE Shadow of The Ninja』をプレイしました。

90年にナツメがファミコンでリリースした作品のリメイク版。
「当時の制作者がセルフリメイク!」というコンセプトのTENGO PROJECTによる
16bit風リメイクシリーズの最新作として、先月29日に各プラットフォームで発売。
私はSwitch版のパッケージ版を買いました。


闇の仕事人KAGE Shadow of The Ninja(ナツメアタリ公式)
https://www.natsumeatari.co.jp/kage/



↑パッケージ版はセガからの発売のようで、ジャケットには見慣れたセガのロゴも。
もちろん中身はナツメアタリ謹製、硬派な忍者2Dアクションゲームです。


巨大都市ローラシア
皇帝ガルダ率いる天魔の襲来により地獄と化した地に、東の国よりやって来た2つの影。
それは、多額の報酬と引き換えに目標を討ち果たす闇の仕事人。
だが、彼らを戦いに駆り立てるのは報酬だけではない。
人々の嘆き、悲しみ。熱い義憤と不屈の魂。人々は彼らを「忍者」と呼んだ。


……というようなストーリー。
原作は近未来のアメリカが舞台でオープニングに自由の女神も描かれていたのですが、
リメイク版はローラシアという架空の都市が舞台でアメリカ要素はなくなっています。
これがデコゲーのリメイクなら文句を言うところですが、ナツメなのでまあいいや(?)
ゲーム内の背景の建築物などのデザインも、和風テイストが取り入れられており
ファミコン版とは様変わりしています。


「闇の仕事人」という副題は、原作ではあまり意味なく付けられていた感じでしたが、
今作では、主人公の戦いが「仕事」であるとオープニングなどで言及されており、
また開始前のアイテム選択が「仕事支度」という扱いだったりと、
幾分か「仕事人」という表現に向き合ったような内容になっているように感じましたね。


逆に、「スーパーリアリズムアクション」というキャッチフレーズ?に関しては、
より一層形骸化した感が強い。
主人公2人のデザインが原作よりもマンガチックになったのに加え、
原作では普通に人間っぽいデザインだったザコ敵が、
今作ではよく見ると鬼っぽかったり人外のようなデザインになっているものが多く、
リアリズムとは一体……と、謎は深まるばかりである(笑)
私は正直原作の雰囲気の方が好きですが、まあこれは好みの問題ですね。



ゲーム内容。
ニンウォリワンスアゲインと同じTENGO PROJECT作品ではありますが、
今回は原作がファミコン(8bit)の作品を16bit風にリメイクということで、
原作と比べて変更点が多いです。

刀と鎖鎌の2種類のメイン武器があるのは原作と同様ですが、
アイテム取得で切り替える形だった原作と異なり、今作では両方とも標準装備。
Yボタンで刀、Xボタンで鎖鎌で攻撃します(操作はキーコンフィグで変更可能)。

ゲーム内マニュアル


↑攻撃、ジャンプ、しゃがみ、薄い足場へのぶら下がり、
それからタメ撃ちによるボム的な忍術。これらは原作にもありましたが、
今作では、ジャンプ中に壁際でBで壁つかみ、そこから上+B連打で壁のぼり、
ジャンプ中に下+B連打でホバリング
兜割という名のジャンプ下突き、そこから派生で立てた刀の上に立つ鍔立ち、
短距離ダッシュ的なステップ移動……と、多くのアクションが追加されています。


道中で手に入るアイテムは、即効のパワーアップ以外は全て「忍び道具」という扱いで
7つまで持ち歩くことができ、モードチェンジボタンと左右入力の組み合わせで
道具を選択して任意のタイミングで使用することができます。

原作で弾数制限のある飛び道具だった手裏剣・爆弾も忍び道具として登場し、
他にも多くの飛び道具や近接武器がステージ中で手に入るようになっています。
回復アイテムも全て忍び道具扱いであり、ストックして任意のタイミングで使用可能。

ただし、道具の選択は立ち状態でしか行えない上に選択・使用時の硬直も大きく、
その間はゲームが止まったり無敵時間があったりもしないため、
とっさに使ってピンチ脱出!のような使い方は困難なのが一筋縄ではいかないところ。


忍び道具は基本的に消費アイテムで、種類ごとに初期弾数も決まっており、
すでに持っているものと同じ忍び道具を取った場合には弾数がプラスされます。
ただし回復系は例外で、どの回復系道具も一度使うとなくなり、
同じ回復系道具を取っても個別にストック枠を占有する仕様。


忍び道具を7つ持っているときに新しい道具を取った場合には、
かわりに枠の右端の道具が捨てられます。
捨てられた道具は横に落ちるので、消える前なら再回収も可能。

忍び道具は全部で50以上の種類があり、収集要素も兼ねているような作り。



↑そしてこれが「仕事支度」画面。
ステージクリア時に持っていた忍び道具は、次回以降のプレイ開始時に
この画面で選択して「購入」し、持った状態でゲームをスタートできます。

本作では[スコア=お金]であり、敵を倒したときに少量手に入るお金と、
ステージクリア時に持っていた忍び道具、クリアタイムなどで
最終獲得額(スコア)が決まるシステム。

そして、過去のプレイでの最大獲得額(=ハイスコア)が
仕事支度で使える資金となります。
この、総計とかではなく「ハイスコア」が購入資金になるというのがポイントで、
プレイが上達して、アイテムの場所を把握し、先に進めるようになるに従って
次回以降の支度金も増え、開始時から強力な道具を持ち込むことができるようになって
最終的なゲームクリアにもより近づいていくという、
考えられたシステムになっていると感じました。



原作が全5面だったのに対して本作は全6面。扱いとしては4面が新ステージですが、
他のステージにもかなり手が加えられており、
総じて原作よりもステージが長くなっています。


原作同様ライフ制で残機の概念はなく、穴に落ちてもダメージだけで近くの足場に復帰。
今回はプレス機などの地形に挟み込むタイプのトラップも登場しますが、
それに挟まれた場合も穴落ちと同様に近くの安全な位置に復帰するようになってます。


ハヤテとカエデの2人のプレイヤーキャラは、今作では移動速度が異なり、
カエデは地上での移動速度が速い代わりに空中で遅いキャラ性能になっています。
2人同時プレイももちろん可能。

通しプレイのアーケードモードに加えて、
クリアしたステージを選択可能で練習にも有用なタイムアタックモードもあり。
難易度はノーマルとハードの2種類。



一通りプレイしましたので感想。

『ニンウォリワンスアゲイン』が比較的原作に忠実だったのとは対照的に、
『KAGE』のリメイクである本作は、グラフィックやサウンドのみならず、
ゲーム内容にも多くの部分に変更や新要素が加えられていました。

原作であるFC版は、当時のこの手のアクションとしては難易度がそこまで高くなくて、
キビキビとしたアクションでテンポよくスピーディーに進めるゲームだったので、
リメイク版でもその感覚が再現されていてほしいなとプレイ前は思っていたのですが、
実際にプレイしてみたところ、そういった方向性の部分からだいぶ別物になっていて、
その点に戸惑いは覚えましたね。

配置された敵の数が原作より明らかに増えており、
ノーマルモードでも原作より難易度が高いように感じますし、
敵が道をふさぐように配置されているところも多くて、
原作ほどスピード感のあるゲームではなくなっていたのはちょっと残念。


自キャラの挙動も、ジャンプ前に原作にはなかった一瞬のタメ動作が入っており、
ボタンを押してから実際に跳ぶまでわずかなタイムラグがあるのに若干の慣れが必要。

新アクションの壁張り付きやそこからの壁登り動作も、ボタン連打が必要だったり、
操作する指の動きから少し遅れて画面内のキャラが動くような操作感覚が
初見ではあまり直感的ではなく、引っ掛かりを覚えたところ。


しかしながら、あくまで元とは別物と割り切った上で遊ぶと、
一本の硬派な2Dアクションとしてしっかり遊ばせてくれる内容だとも感じました。

前述の通り難易度は高めですが、試行錯誤して攻略パターンを作り、
難所を突破していく硬派な手応えは存分に味わえます。


アクションの増加と2種のメイン武器を併用できるようになったことで
一つの場面で取れる選択肢も多くなり、
素早く近づいて刀で斬るか、中距離から鎖鎌で仕留めるか、
さらに場面によっては遠距離攻撃系の忍び道具で
遠くからより安全に攻撃することもできたりして、試行錯誤のしがいがあります。

ライフ消費で画面全体を攻撃する忍術も、原作よりライフ消費量が少ないので、
敵が多くて高難度な場所をスムーズに突破するための方法として
十分に選択肢に入るようになっており、攻略に役立てられます。


一見ノーダメ突破困難で適当に動いてると食らいまくるような場面もありますが、
各アクションを使いこなしてしっかりパターンを作れば道は開けます。
ちゃんとこちらのやり込みに応えてくれる作り。

ボスのアレンジ具合や美麗ドット絵グラフィックも見ごたえアリ。BGMも熱い!



というわけで、これはこれで面白いゲームで、存分に楽しませていただいたのですが、
その上で気になったところを挙げるなら……やはり忍び道具まわりの仕様でしょうか。


選択時にも使用時にも硬直があってとっさに使うのが無理なのは上にも書きましたが、
それでいて攻撃用の道具は通常攻撃と大差ない威力だったり
使いにくい挙動のものも多く、どうしても使いどころが限定されるというか……
事前に敵の配置や挙動を把握した上で、
要所要所で決め撃ちするような使い方がメインになるように思えます。

ですが、そもそも敵の挙動や配置を把握できてるのなら、
通常攻撃の刀か鎖鎌で対応できる場合がほとんどなので、
やはり輪をかけて使いどころが少ない印象になってしまうなと。


遠距離攻撃系の道具にいくらか使いどころがあることは、
やり込むにつれて一応分かってきたのですが、
近接攻撃系の道具に関しては本当に使いどころが見出せず。
2面最初の中ボス触手を一発で引っ込められるくらいかな?
まあそれも普通に刀を使うのと手間はほとんど変わらないのですが。


また、使用頻度の低さにもかかわらず色々な忍び道具が頻繁に手に入るので、
温存しておきたい回復系の道具が所持数オーバーで不意に捨てられてしまわないように
たまに道具枠を回して調整しなければならなかったりもして、
その点でもやや疎ましさがあるなと。


もう少し全体的に、使い勝手が良かったり選択操作時のモタつきがなかったりすれば
違ってくるかもしれませんが、現状の忍び道具関連の仕様・挙動は
あまり面白さに繋がってない点が目立つように思えました。


あとは、新アクションの「鍔立ち」も、存在意義が薄く思えて気になったところかな。
役立つ場所が全くないわけではないのですが、下突きで地面に当たると
自動で鍔立ちに移行という性質上、意図せず暴発して無駄な時間を食うことの方が多い。



そんなこんなでハードモードまでノーコンティニュー・道具持ち込みなしでクリア達成。
両方のキャラでクリアしましたが、ハヤテの方が挙動が素直で楽かな。

ハイスコア(支度金)は道具持ち込みありで106933まで稼げました。


ハイスコアを狙うなら、スコア(金)稼ぎ用の忍び道具があるので、
それを仕事支度で持ち込んで、「使うことで稼げる道具」を使いつつ、
「使わずに維持することで稼げる道具」はクリアまで維持。
そういう方向性のプレイになると思います。

一方ステージごとのタイムアタックモードでは、一定時間無敵になれる道具を持ち込んで
適宜使うことで敵をスルーして駆け抜けるプレイになるでしょうか。


忍び道具もコンプリートしましたが、「小槌」が最後まで見つからず、
結局Web上の情報に頼って取ったのが少々心残りかな……(笑)

他にも見つけにくいものがありますが、クリア時のスタッフロールの後ろで
分かりやすいヒント(またはズバリ答え)となるデモが流れますので、
一度クリアしてそれを見ればだいたい回収できるはずです。


色々書きましたが、芯の部分は非常に骨太で面白い2Dアクションゲームでした。
近年流行りのローグライクメトロイドヴァニアではない、
昔ながらのアーケード的横スクアクションとして
これだけしっかりしたものを出してくれることをありがたく思います。
「昔ながら」ではない忍び道具まわりのシステムなどに歪さは感じたものの、
全体としてはかなり楽しませていただきました。いいゲームでした。